今日欧州委員会から発表されたデジタル単一市場戦略に関して、私は深刻な懸念を抱えています。
この戦略は、ただ単に「Netflixのためのローミング」を推進しているだけで、ジオブロッキングの障害を排除しようとしていないためです。
「このコンテンツはお住まいの国では見ることができません」といってユーザーがアクセスを拒否されるとき、そのコンテンツは必ずしも直接購買されるために提供されているわけではありません。広告収入や、公共資本によってコンテンツが提供されていることもあります。デジタル単一市場戦略で提案された施策は、「正規に入手された/購入されたコンテンツ」にのみ適用されるため、EU市民のデジタル生活に大きな障害を残しています。つまり、欧州委員会は公共放送等によって提供されるコンテンツを無視しており、これは特に、国境を越えて文化コンテンツにアクセスしたいマイノリティ言語話者に深刻な影響をもたらします。
金銭評価できるモノとサービスのみが適応対象となる、この施策は論外です。ボーダーレス・メディアにおける共通市場に、人工的に国境を引き、自由なモノやサービスへのアクセスを妨害すること。これは正当化され得ません。私たちは、差別と障壁のない、自由なウェブを目指しつづけます。
また、デジタル単一市場戦略は、域内著作権法調和への意味ある施策をなんら提示していません。
欧州委員アンシプ氏は「国内著作権法という鉄壁を打ち破れ」という欧州委員会ユンカー委員長の要求に応えず、根本的な問題の解決にあたろうとしていません。特に、EU28加盟国が28の異なる国内著作権法を持ち、異なる解釈のされ方をする異なる著作権の制限と例外を有している、という状況に、なんの解決策も示していません。これらの28の国内法は、ヨーロッパにおける国境を越えた文化のやりとりを阻害し続けるでしょう。人々のオンラインアクティビティは、常に法的不確実性に晒され続けるでしょう。自分の写真やランドマークの写真をオンラインでシェアすることや、オーディオビジュアル引用といった行為まで。
これらの問題に関して欧州委員会は、昨年行った公共諮問で聞かれた多くの声を無視しています。また委員会は、図書館やアーカイブといった情報社会において重要な使命を果たすべき存在が著作権法の改正を求めている事実さえ無視しています。ヨーロッパのスタートアップが、統一されていないEU著作権法のためにスケールできず、アメリカの巨大インターネット企業との競争ができなくなっているという事実を無視しています。さらに、ヨーロッパレベルで不当な契約から著者を守ること、障害を抱えたユーザーへ文化のアクセスを保証することもできていません。
ユンカー委員会は海外オンラインプラットフォーム事業の幅広い調査を行うと同時に、彼らとの対話を続けていくとしています。インターネットにおいては健全な競争が望まれるにも関わらず、委員会はインターネット仲介媒体(Intermediaries,インターネットサービスプロバイダ、.オンラインプラットフォーム、ソーシャルメディアなど)へ「注意義務」を課すことによって、巨大企業による独占を進行させようとしています。委員会が提出した文書によればこの注意義務は、ユーザーからアップロードされたコンテンツの違法性を確認するため、オンラインプラットフォームがそのコンテンツを積極的にスキャンするよう強制しています。これは終わりのない大量監視と、私企業への法施行のアウトソースという大きな問題に加えて、新規インターネット仲介媒体の市場への参入を難化させることによって健全な競争を阻害しています。単純に考えてみてください。世界中からアップロードされるビデオや写真を毎日チェックできるだけの著作権法専門家はいないのです。必然的に、プラットフォームは信頼性のないことで知られている自動検知アルゴリズムに頼ることになり、またこれは新規事業の市場参入へ大きな障壁を作ります。
最後に、欧州委員会エッティンガーデジタル経済担当委員がジオブロッキングを擁護している点についてです。彼はジャーナリストを「タリバン」などといい、ジオブロッキングが無益だとしていますが、これは委員会でコンセンサスが取れているかへの不信を表すものとなりました。
ユンカー欧州委員会にとって、いまは運命を左右する時となってきています。副委員長は、委員会がデジタル単一市場に対して相反する考えを持っているわけではない、と証明してくれるのでしょうか?
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