訳者注: EUの「副次的著作権」の背景は以下の記事がわかりやすいです。
グーグル税」は欧州全域に広がるのか? 著作権改革文書が流出」The Huffington Postより

欧州委員会はハイパーリンクに全面攻撃をしかけようとしています。検索エンジンやポータルサービスは無料記事を拡散するためにメディアに使用料を支払わなければならないという、バカげた考えによって。

副次的著作権の新たな企みは、ハイパーリンクへのこれまでにない最も危険な攻撃だ。Tweet this!

このキャンペーンはドイツとスペインにおける「出版社への副次的著作権」を導入しようとする動きから始まりました。この動きはGoogleニュースの閉鎖(そして、記事そのもののアクセスの激減)など甚大な被害をともなってあっという間に炎上。にも関わらず、欧州議会で私が著作権改正レポートを作成したとき、EPP(欧州人民党)の議員はこの「グーグル税」のEUへの拡大を許す条項を入れようとしてきました。私はこれを必死で阻止しました。そして、リークされた著作権法改正法案はそれをさらに上回る危険なものです。

IPKatがリークした著作権改正報告書によれば、欧州委員会はコンテンツのリンクを著作権保護の対象にしようとしています。ユーザーがリンクを貼るのにメディアが著作権を主張できる―これは現行の著作権法の解釈の仕方、そして常識的なインターネットのあるべき姿に完全に反しています。あらゆるウェブリンクが地雷となり、出版社はインターネットをつかうすべてのひとに法的責任を問うことができるのです。

再装填された「副次的著作権」。ターゲットへの新たな作戦とは

報告書で、欧州委員会は「インターネットでのコンテンツ使用における法的不確実性」を問題視し、いまの著作権法下ではなにに許可が必要で、なにに必要でないのかがはっきりしないとしています。法律用語では、「公衆への公開」権とはなにを指すのかが不確実であるといいます。

これは欧州司法裁判所のスヴェンソン判決からの引用です。この裁判では、公開された記事へのリンクに著作権者の許諾は不要という判決が下されましたが、いくつかの疑問は解消されないままでした。たとえば、「公開されたコンテンツ」とはなにを指すのか、有料課金制のコンテンツへのリンクはどのように扱われるべきなのか、などです。

欧州委員会は、EU数カ国がこの「出版社への副次的著作権」を推進しているからというそれだけの理由でこれを導入しようとしているのです。欧州委員会はただ「EU内の著作権法がバラバラになってしまっている」ことを嘆くばかりで、これらの法の本質的な問題はなんなのか、そしてそれを解決するにはどうすればいいのか、考えようとしていません。オンラインのコンテンツ利用におけるEU内で統一されたルールはもちろん必要です。ですが、副次的著作権を導入したり独占的著作権を強化することでは問題は解決されません。

この点で、欧州委員会の考えは端的に間違っています。副次的著作権は欧州司法裁判所が残した疑問への答えになっていません。むしろ、欧州司法裁判所によって「違法でない」と明確に決定されたオンラインコンテンツへのリンクを再度持ち出して、それに使用料を課そうとしているのです。

欧州委員会はさらに、独占的著作権の範囲を拡大しようともしています。つまり、欧州委員会が言うところの「著作権法の法的不確実性を解消する」とは、「著作権で保護されたコンテンツにリンクを貼る行為は、ユーザーへコンテンツのアクセス権を与えることであって、ゆえに権利者からの許諾を必要とする」ことを指すのです。この考えはスヴェンソン裁判での「リンク元のコンテンツの権利者に許諾を得ることなくリンクは可能である」という決定に根本から反しています。

「副次的著作権」ゾンビの復活

欧州委員会ギュンター・エッティンガーデジタル経済担当相は過去数ヶ月の間、幾度にもわたって経営不振に悩む出版社への保護的な措置が必要であると繰り返してきました。

欧州議会マーティン・シュルツ議長でさえ、「われわれは出版社とオンラインプラットフォームの関係について、著作権をどうしていくかを明確にしていかなければならない」と発言しています。

出版社は当然、ロビー活動を通して政治家におおきな影響を及ぼしています。そしてそれら大企業からロビー活動を受ける政治家たちは時代にあっていないビジネスモデルを支援するために、この「副次的著作権法」を適用させようとしているのです。

欧州議会が提示する「措置」―なにかにリンクを貼るときに許諾が必要なこと―は、誤った前提に基づく、見込みのないことへ向けられた、まったく意味のない解決策です。欧州委員会の考えは、ドイツやスペインで導入された出版社への副次的著作権をはるかに上回る危険で愚劣なものです。

想定される被害

ハイパーリンクを著作権の対象にすることは、私たちが知っているいまのインターネットの姿を完全に変えてしまう。Tweet this!

リンクを投稿したり、シェアしたり友達や家族に送ったりすることは誰もが毎日当たり前のようにに行っていることです。すべてのリンクについてそれが法的にどうなのか把握することはユーザーにとってもオンラインプラットフォームにとっても不可能です。コンテンツはオンライン上で常に変化するため、コンテンツの法的状況も変わるでしょう。なにより、すべてのリンクは誰かの著作権保護下にあるテキストや画像につながっているのです。権利者がそれを知ろうが知るまいが、またそのコンテンツによって彼らが利益を得ようとしているかしていないかに関わらず。

すなわち、この措置によって考えられる結果は、法的不確実性、ユーザーの混乱、そしてリンクを貼るすべてのユーザーへコンテンツの使用料を払わせようとする動きの始まり―。少数の企業の利益によってインターネットのニューロンたるリンクという機能が制限されようとしています。絶対にこれを許すわけにはいきません。

いま、声を上げよう

リーク文書は法案ではなく、欧州委員会の著作権法改正における来年のプランをまとめたものです。このプランは12月9日に発表されることになっています。いまリークされた文書をいまから変えることは難しいかもしれません。ですが、批判を受けると予想される文書は、ひとびとの反応をチェックするために意図的にリークされることがあります―もしなにも批判や反響がなければ、欧州委員会は安心してプランを発表するでしょう。

だからこそ、いま動くことが大切なのです!!欧州委員会に副次的著作権の導入は誤った提案だと伝えましょう。出版社の既得権益を守るためにインターネットの自由なコミュニケーションを破壊することはやめろと声をあげましょう。あなたの選挙区の代表に、副次的著作権の導入は過去に否決されたと伝えましょう。多くの政治家はヨーロッパ企業の競争力の低下を心配しています。彼らにオンラインリンクに法的責任を求めることはヨーロッパのIT産業に予測不可能なリスクをもたらし、イノベーションの芽を踏み潰すことになると伝えましょう!彼らに、私たちの意志を示しましょう!

インターネットを壊すな!!

1998, Nintendo

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